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今までに所有したことのあるクルマ
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First Impression
MCC smartに初めて乗ったのは、smartが日本に正式輸入されるより約2年も前のことでした。当時カーセンサーで働いていた私は、副編集長がsmartを購入したと聞き、乗ってみたいので貸してくれるようお願いすると、彼は快く週末に貸してくれたのでした。
メルセデス・ベンツとスウォッチが50%ずつを出資して作り、後にダイムラーグループの100%子会社となったMCC(Micro Compact Cars)の第一作です。全長が2.5mしかないボディは、フル乗車時にも狭さを感じさせない、意外にゆったりしたもの。座ってみてまず実感したのはシートがしっかりしていることです。日本の軽自動車と似た車幅しか持っていないのに、普通車並みの幅のシートが設置されています。このため、座った感覚は小型車っぽくありません。広めのヘッドスペースとあいまって、少なくともワンクラス上のサイズに感じられるのです。「小さいクルマ=安っぽい」という図式にすっかりなじんでしまっている日本人には、こんなシートを積んだ軽自動車はまず作れないだろうと思われました。どんなサイズ、どんなクラスのクルマもきちんと設計し、きちんと作る。そういうことを当たり前にやってしまうドイツ人の気質を垣間見た気分でした。(smartの生産自体はフランスで行われています)
乗っている人に非日常を感じさせてくれるインテリア。これが乗り込んで最初の感想でした。シティコミューターという、言ってみれば最も日常的なアシグルマが、このカワイイ内装のおかげでダサくならずにすんでいるのです。
とにかくすべての物が普通じゃないカタチをしています。屋根は総ガラス張りで日差しが存分に注がれています。タコメーターなんかカニの目のようにセンターに生えていて、エアコンの吹き出し口だってドームみたい。バックミラーが小さいのが少々気になりましたが、左右の座席の間が狭いため、これ以上の範囲はどうせ見えないのでした。
今までの常識を覆して、なおかつ嫌悪感を抱かせないこのデザインは秀逸ですが、走っていても停めていても目立ってしかたありません。借りた当時はやたらめったら話し掛けられました。
走りははっきり言って期待していませんでした。なんたって600ccしかなく、軽自動車を作ってきた歴史のない国のクルマです。ちっちゃい・軽いって言ったって限度があるだろうって思っていたんです。スピードメーターだって国内の軽自動車と同じ140km/hまでしか刻まれていません。しかしエンジンを吹かしてみると低めのエキゾーストノートがなかなかいいカンジで、お、イクのか? と思いながら発進しました。
加速は、良くもありませんが悪くもありませんでした。エンジンの吹け上がり自体はかなりいいのですが、トランスミッションの切れ目の長さがイマイチ。自動クラッチの6速シーケンシャルマニュアルなんですが、スポーツモード付きのATとは違い、マニュアルトランスミッションに近い仕組みです。シフトレバーを操作する度に自動的にクラッチを切る→シフトチェンジ→クラッチをつなぐという操作をやってくれるのです。この操作の中で、クラッチの切れている時間がとても長く、シフトアップの度に加速が一息ついてしまいます。上り坂での加速では息つきが大きく、ちょっとツラいものがありました。また、坂道発進の際には、左足でブレーキを踏みながら右足でアクセルを操作しなければ下がってしまうのも困りものです。
第三京浜に乗り入れた私はさらに別の問題に直面しました。横風です。背が高い上にホイールベースが短いので、横風を受ける度にクルマの向きが変わってしまうのです。これは慣れるまでかなりコワイものでした。横風さえ受けなければ直進安定性も問題はないですが。
ワインディングは本来このクルマが走るべき領域ではありませんが、それでも横風に身構えながら走る高速道路よりは格段にマシです。エンジンがラゲッジルームの下にあり重心が低いためか、これだけの背の高さの割にはコーナリングは安定しています。
コメント
さて、副編集長に借りてスマートに試乗して2年後。このスマートはとあるライターさんの手元にあり、ライターさんは買い手を探していました。ちょうどクルマを探していた私は、それを売ってもらうことにしました。試乗して以来ずっとお気に入りだったスマートをついに手に入れたのでした。しかも、試乗したまさにそのクルマを。運命を感じました。
しかし、別の運命との交差によりスマートとの生活はあっけなく終了します。出産です。夫婦2人分のシートしかないスマートには、子どもを乗せることができません。そういう訳で、とっても気に入っていたスマートとの生活はわずか7ヶ月しか続かなかったのでした。
7ヶ月間スマートに乗って暮らしていましたが、小さいために不便を感じたことはほとんどありませんでした。日常的に気になったのは、家具の買い物のときくらいです。通常の買い物や1〜2泊程度の夫婦での旅行程度なら、ラゲージスペースにも不満はありません。
友人を乗せることができないという問題はありましたが、逆にそういう場合には友人のクルマに乗せてもらいました。そういう意味では、うちは困っていませんでしたが、みんながスマートになったら困るでしょうね(笑)
実はちっちゃいスキーキャリアを背中につけて、ミニスキーを背負ってスキーに行くという夢があったのですが、あっという間にスマート生活が終わってしまったので、かないませんでした。
スペック
MCC スマート Limited1
平成11年(1999年)式
排気量
598cc
エンジン形式
直列3気筒SOHC
インタークーラー付ターボエンジン
最高出力
55ps/5250rpm
最大トルク
8.2kg-m/2500rpm
トランスミッション
6MT
ボディサイズ
2560×1515×1550mm
車両重量
750kg
標準装備
デュアルエアバッグ
ABS
キーレスエントリー
アルミホイール
革張りシート