TopCarsもう少し乗ってみたクルマ>アルファロメオ75 TwinSpark
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アルファロメオ75。この車名を聞いてすぐにエクステリアを想像できる人は、なかなかのクルマ好きなんじゃないだろうか。
アルファも156や147で一般人にもウケるようになったが、それより前のモデルはいわゆるエンスーの香りが漂い、手を出してはイケナイ雰囲気をまとっていた。75も、そういう時代の1台だ。

押しの強い外観にせいか、パッと見は3ナンバークラスかと勘違いしてしまう。しかし実際には全長4.4m弱、全幅1.7mと、5ナンバーの枠に十分収まるコンパクトサイズだ。ウェッジのきついボディラインは数世代前を思わせるデザインテイストだが、中味は前後輪ともディスクブレーキを採用し、エンジンは可変バルブ機構付き、2000ccで145psを発生する比較的新しいクルマなのだ。
実は私も調べるまではもっと古いクルマだと勘違いしていたが、1992年に155にバトンタッチするまで生産されていたモデルだ。

インテリアの話や走りの話をする前に、私が試乗した75についての重要な情報を記しておこう。
私が友人から1週間ほど借りて乗り回してみた75は、普段のアシには使われておらず、もっぱらサーキット走行のために使用されていたクルマだった。基本的にはノーマルなのだが、マフラーがサーキット仕様の直管マフラーに換えられている。それに内装がやや簡素化されていた。

さて乗り込んでみると、名前から想像するような高級車然とした雰囲気ではない。といっても、アルファやフェラーリの内装があんなにエッチなのはじつはここ数世代のことで、もともとは簡素なインテリアを持っている。これらのクルマは見た目の印象よりも走りで雰囲気を作るのだ。
運転席まわりで目につく珍しいものといえば、サイドブレーキのレバー。ちょっと言葉では説明しづらいのだがコの字の独特の形状だ。

エンジンをかけ発進。シフトストロークが意外に大きく、スポーティにシフトチェンジするのは難しい。初めは恐る恐る、そして次第にアクセルを大きく開けていくと、中回転域からは触媒にさえぎられない気持ちのいいエキゾーストを響かせて軽快に加速していく。ツインスパークと呼ばれる各気筒に2つずつスパークプラグのついた4気筒エンジンは、年式相応の回転までしか回らないものの気持ちよさは十分。コーナーではFF車ともFRとも微妙に違う挙動を見せる。なんというか、クルマの中心を軸にしてクルッと回転するような回り方をするのだ。体に感じる動きはミッドシップ車に近い。

実はこのクルマ、トランスアクスルといってトランスミッションを後方に積む方式を採用しているのだ。通常はエンジンから出た出力軸はトランスミッションで変速され、プロペラシャフトを通じて後軸へと伝えられる。しかし75の場合はエンジンから出た出力軸は直接プロペラシャフトを回転させる。プロペラシャフトから伝わる出力を後方に搭載したトランスミッションで変速し、後軸を回転するのだ。そのため、重量物が前方に集中せず、前後の重量配分が均等に近いのだという。これで、ミッドシップのような挙動は納得。
しかし、ハンドリングマシンの代名詞とされるミッドシップとは、やはり直接比肩すべきではないようだ。ミッドシップには回転軸から遠いところに重量物がないという、もう一つの大きな強みがあるのだ。それに対して75は、前にエンジン後ろにトランスミッションと、おもりを積み込んでバランスを取っているにすぎない。したがって運転してみた印象を説明するならば、ミッドシップのコーナリング時の挙動を鈍くしたような雰囲気であった。

晴れた休日、75をワインディングロードへ持ち込んでみた。山の中なら大きめのエキゾーストも気にならず、安心して踏み込める。コーナーの挙動は、走っているうちに慣れてくる。違和感は残るものの、ミッドシップのように急激に向きが変わるような恐怖感を運転手に与えるものではないため、なじみは早い。アクセルを開けた瞬間、クルッと向きが変わる。しかしそれは運転手が想像して準備し、対処する余裕のある早さでの変化だ。慣れてくれば、他のクルマでは味わえないリアの動きを楽しむこともできるようになった。アシが硬めのセッティングではなかったことも、コーナリングの挙動に余裕があった一因かもしれない。

超高性能車ではない。しかし、運転していて楽しいクルマだったのは確かだ。ハチロクといい75といい、「エンジン全開、元気いっぱいで走ってるぜ!」っていう実感が味わえる。やっぱり私は、よくできたスポーツカーよりもこういう楽しい気持ちになれるクルマが好きだな。
スペック
アルファロメオ 75 ツインスパーク 平成4年(1992年)式
型式 不明
エンジン型式 不明
排気量 1961cc
エンジン形式 水冷直列4気筒DOHC
最高出力 145ps/5800rpm
最大トルク 19.0kg-m/4000rpm
トランスミッション 5MT
ボディサイズ 4330×1660×1400mm
車両重量 1190kg