TopCarsもう少し乗ってみたクルマ>日産 スカイラインGT-R
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R32型スカイラインGT-R。いわゆるBNR32ってやつ。1989年に鮮烈なデビューを飾って以来、長期に渡って日本の走り屋の心をつかんだクルマだ。一時期は中古車の価格がBNR33よりも高かったというくらい、強いカリスマ性を持っている。「一度は乗っておかねば」と思わせるクルマだ。
今回、運良くフルノーマル状態のGT-Rを運転する機会を得た。エンジンだけではなく、マフラーもホイールもハンドルも、すべてノーマル状態のまま。といっても、すでに10年選手なので経年劣化は免れないが。

エクステリアはフルノーマルなので特に感慨もない。よく知っているデザインだ。ブリスターフェンダーと、当時としてはかなり大きめのリアウィングがヤル気を感じさせる。最も、その後に訪れたGTウィングブームのせいで、このウィングも今となっては大して大きいという印象はない。
インテリアも完全にノーマル。あえて言うならカップホルダーが追加されている程度だ。追加メーターなども一切なし。私としては、インテリアの方はエクステリアほどヤル気が感じられないなという感想。

運転席に座り、シート位置を調整したらエンジンをかける。ノーマルマフラーのおかげで、エキゾーストはとても静か。アクセルを軽くあおってみても、その印象は変わらない。独特な形状のライトスイッチとワイパースイッチの位置だけ確認して発進。
こちらもノーマルのままのクラッチは軽く、何の問題もなくスタート。2速、3速とシフトアップして加速。街乗りは実にスムーズで、280馬力という数字とGT-Rの文字が頭の中で次第に薄れていく。すごさを押し付けてくるのではなく、高性能をすました顔でこなしている印象だ。

バイパスへ出たところで軽く加速させてみる。信号からのダッシュでもすぐに制限速度へ届く。スピードメーターはみるみるハネ上がっていくのだが、加速感や恐怖感はほとんどない。50:50から100:0までトルクを自動的に配分する4WD方式を採用しているため、加速時の姿勢に乱れがないのだ。あっけないくらい運転が簡単だ。
山道へと乗り入れてみる。バイパスでは圧倒的なトルクのおかげで車重を感じることはほとんどなかったのだが、きついコーナリングではフロントヘビーな素性を垣間見せる。軽いFR車のように巻き込むように回っていくのではなく、逃げようとするフロントに駆動力を与えて無理やりイン側へ進ませているのが体にも伝わってくる。軽やかにコーナリングを楽しむ、といったタイプのクルマではないが、慣れてくれば緩めのコーナーではかなり速い。
高速道路へ乗り入れて加速とクルージングを試してみる。合流から制限速度まで一気に加速。一瞬だ。相変わらず、加速の恐怖感も快感もないけれど。100km/hでのクルージングは超楽チン。余裕のトルクで5速キープのまま自由に加減速できる。クルージングしながら、S2000を思い出していた。GT-Rは大出力と4WDで安定感を演出し、S2000はボディ剛性で安定感を演出する、そういう印象の違いかな、と考えながら。

もっとすごいクルマを想像していた。「あの」GT-Rなんだもの。しかし、実際に乗ったクルマはすごさを感じさせないほど完成度の高いクルマだった。姿勢を乱さずに一気に加速し、コーナーでは加重配分に応じてトルクを配分してトラクションを調整してくれる。それらを運転手に「すごいことなんだ」と意識させずに行う。本当に完成度の高いクルマだと感じた。だが、面白くない。アクセルを床まで踏みつけて加速する、あの危なっかしさ。コーナー中にフロントのグリップを考えながら走る、あのギリギリ感。そういったものがGT-Rからは感じられなかったのだ。スポーツカーとして楽しむには、これはちょっと物足りない。
ただし、高速道路を長距離移動する際など、ハンドルやタイヤグリップに気を使わずにすむので疲れないですみそうだ。4WDもついていることだし、スキーに行くときなんか便利かもしれない。
スペック
日産 スカイラインGT-R
型式 E-BNR32
エンジン型式 RB26DETT
排気量 2568cc
エンジン形式 水冷直列6気筒DOHC
最高出力 280ps/6800rpm
最大トルク 36.0kg-m/4400rpm
トランスミッション 5MT
ボディサイズ 4545×1755×1340mm
車両重量 1430kg